コミックマーケット104アフターレポート


会場
東京国際展示場東京ビッグサイト
全館

会期
2024年 8月11日(日・祝日)〜12日(月・振替休日)

サークルスペース数
サークルスペース数 約2万4千


入場者数
11日(日) 130,000人
12日(月) 130,000人


更衣室登録数
 男性女性
11日(日)1,794人2,583人
12日(月)2,153人3,617人


コミケット公式発行物
コミックマーケット104カタログ冊子版 表紙イラスト:タカヤマトシアキ
紙袋(大) イラスト:アシマ


出展企業数
130社


マスコミ取材
 コミックマーケット104取材申込一覧

(2024年8月20日データ部分公開)



 猛暑の夏、開催前の台風の襲来や、前日の地震等ハラハラすることはありましたが、幸いにもゲリラ豪雨等に見舞われることもなく、コミックマーケット104(以下、C104)は、のべ26万人(1日目13万人・2日目13万人)という多くの皆さんに参加していただきました。ありがとうございます。この夏は、8月11日(日)が山の日と重なり、12日が振替休日となる日程になることも考慮し、従来の土・日ではなく、日・月での開催を試みました。
 救護室や場外救護のテントを利用された方々の人数(以下、救護室利用者とまとめます)は、例年の夏以上でしたが、2日目は、風が吹いていたこともあり、救護室利用者は1日目の半分程度と、ちょっとした気候の変化が、熱中症の発生に大きく影響しました。救護室利用者の9割は熱中症によるものでしたが、大半の方々は、休憩後に自力で帰宅しています。また、救急車の要請は、熱中症だけでなく、持病や転倒等を合わせてですが、例年より多い件数でした。熱中症に罹った方々の傾向としては、10代・20代や海外参加者等の初心者参加者の対策不足(睡眠不足・朝食を取らない・軽装等)があいかわらず多く、事前から啓蒙には努めているものの、まだまだ告知が足りていないのかもしれません。とはいえ、Xの仕様変更以降、コミケットも他のイベントと同様に主催者からの告知が以前よりも参加者に伝わりにくくなっていることもあり、様々な試みを続けていく必要があります。

 海外からの来場者は今回も非常に多く、準備会・国際部の対応記録や、海外用電子入場チケットの販売実績から71の国と地域からの参加者を確認し、昨冬(73ヶ国)とほぼ同様の幅広さを維持しています。人数的には夏は特に中国語圏の来場者が多くなる傾向が続いており、それ以外に北米、東南アジア、欧州からの参加が多い他、韓国からの参加も増加しています。前述の救護室利用者においても海外の方が少なくなく、医師と倒れた方とのコミュニケーション等、国際部の活動は質も量も変化しており、様々な対応が必要となっています。


 チケットは「アーリー入場」「更衣室先行入場」のいずれも2日間ともに抽選となりました。また、初日は午前入場リストバンド型参加証がほぼ完売、午後入場は両日とも概ねスムーズなものの、リストバンド型参加証の購入列はまだまだ長い状況です。午後入場の開始時間を繰り上げ、事前価格と当日販売価格の差をつけて事前購入に誘導することで当日購入の列を短くする対策は、一定の効果が見られるものの、さらなる周知の努力が必要かもしれません。一方で、施策として敢えて倍以上の価格差を付けているにもかかわらず、当日思い立ってコミケにやって来たのであろう方々が少なくないという現状は、準備会を些か困惑させてもいます。


 チケット/リストバンド型参加証といった入場証券の導入後、入場時間の分散、深夜来場者の激減、滞在時間の長時間化、帰宅時間の集中に伴う駅までの帰り導線の混雑、といった参加者の行動変化は、C104においても傾向は変わりません。C103の入場トラブルもあり、従来定めていた来場目安時間という考え方を廃止しましたが、一般参加者の午前入場の来場時間が極端に早まることはなかったようです。また、今冬のC105からは、帰宅混雑や(特に)午後入場参加者がコミケット全体を楽しむ時間が限られていることへの対策として、企業ブース1日目の閉会時間を17:00に延長(2日目は最終日の撤収作業もあり今まで通りの16:00に閉会)します。これは東京オリンピック対応として4日間の青海・有明2ヶ所での分散開催が行われる前、C95までの形に戻ることになります。


 さて、高齢化と言われているコミケットですが、参加者の携帯電話の登録情報や、リストバンド型参加証の専門店での購入情報を参照すると、20代以下がほぼ半数という数字が出ています。暑さもあり体力面からコミケットへの参加を「卒業」をされる方も少なくない昨今ですが、一方でオタク趣味は一生の趣味ということもあり、どうしても年齢を重ねた方が目立ってしまうところがあります。何はともあれ、若い一般参加者が、コミケットへの参加を通じて、サークル参加してみよう、自分も同人誌、同人作品を作って自己表現していこう、という行動に繋がることを期待したいところです。

 サークルスペース数は、2日間で約2万4千スペースと、C103よりもやや減となりましたが、C103と変わらず東7ホールもサークルスペースとしたため、サークルに好評いただいている机間の間隔を空けるのは、C103の20cmからC102と同様の50cmに戻しました。また、東7ホールが壁にポスターを貼れないことへの対策として始めたポップスタンドの貸出ですが、前回の運用が問題無かったことを受けて、サークルを配置した全ホールで実施し、両日とも好評につき完売となりました。追加イスも同様に完売となっています。


 サークル周りで今回大きく変わったのが、サークル駐車券です。近年有明地区の開発が進む中、以前は借用できた空き地や駐車場が使用できなくなったことにより、日によってはサークル駐車券の抽選率が約2倍という、サークル参加自体よりも遥かに厳しい状況が、毎回続いていました。今回、有明テニスの森駅至近の有明北臨時駐車場を、新しいサークル駐車場として確保し、不備以外の全ての申込サークルに対して駐車券を発行することができました。ただ、この場所は東京ビッグサイトとの台車を押しての移動にはかなり距離があることもあり、割り当てられたサークルが、当日朝、会場での荷下ろしを可能とするとともに、有明北臨時駐車場と会場間のシャトルバスを運行しました。今回は初回としての試行という側面があり、次回に向けての改善点がいくつか見つかっているものの、アンケート他の反響から察するに、割り当てられたサークルにも概ね好評だったように思います。


 サークルの配置ホール(東1〜7ホール、西1・2ホール)、傾向、曜日割りも大きい変化はなく、今回も1日目は、マンガ・アニメ・ゲーム系のパロディジャンルが中心の配置を行い、『ブルーアーカイブ』他のソーシャルゲームや VTuber のスペースが盛り上がりました。同様に2日目も、創作系・コスプレ等が配置され、創作ジャンルに人が集まっていました。

 企業ブースは、今回も西3・4ホール、南3・4ホールを使用し、出展社数は130社。大型のブースが増えたこともあり、小間数ベースでは過去最大の規模となりました。前回のアフターレポートでも触れましたが、企業ブースの傾向が、物販だけではなくプロモーションも重視するようになっており、凝った造作やブースの大型化、様々なイベントを行う企業が増えています。一般参加者が閉会まで企業ブースに多数残っていることもあり、企業ブース1日目の閉会時間の17:00への延長は、帰りの混雑対策だけでなく、こうした状況にも対応するための施策という側面もあります。昨夏多くの方々に利用いただいたレセプションホールの有料休憩所が会議棟改修工事で設置できない中、pixivさんの無料休憩場所が昨夏に引き続き好評、IRIAMさんの「全力冷却」ブースも話題となりました。また、大塚製薬さんには、引き続きドリンク販売でご協力をいただきました。


 更衣室・コスプレエリアは、更衣室を東8ホール・南2ホールに置き、南1ホール、東8ホール外・屋上展示場をコスプレエリアというC103を踏襲した割り振り(東7ホールはサークルを配置)。前回問題となったクロークの待ち時間は、運営をお願いしているビッグサイトサービスさんに改善をお願いし短くなりました。なお、開会前のサークル参加者が更衣室を利用する時間帯は、東のサークル参加者のコスプレイヤーが、南2ホールほど広くない東8ホールの更衣室を利用することもあり、そこでは特に待ち時間が生じている状況です。
 コスプレイヤーの数は、冬コミから夏コミということもあり、若干の更衣室利用者の減少となりました。コスプレの特性として、暑い夏よりも寒い冬の方が参加しやすく更衣室利用者も冬の方が多い、という傾向は以前からありますが、それでもC103に引き続き、2日間のべ1万人越えという状況を維持しています。
 また、コスプレに関連した、事前からのSNSでの『コスプレ参加表明テンプレート』、当日のコスプレエリアの『フォトスポット』や『フォトフロップス』、更衣室出口付近に簡易裁縫道具を置いたお直しコーナー『コスプレさいほうばこ』といった企画を引き続き行っています。特にコスプレさいほうばこは、一部の備品が足りなくなるほどの利用があり、コスプレイヤーからの認知も進んできたと感じています。


 コスプレ関連以外の各種企画は、こちらも近年の施策を引き継いでいます。事前の情報発信では、ご好評いただいている『コミケ初心者ガイド』で、前回の一般参加編に続き、特にサークル参加編を改訂・充実させた他、Xのスペースでのトークも定期的に行ない、コミケに慣れていない一般参加者の皆さんからコミケットにより親しみを持ってもらえる様にと工夫しているところです。
 当日企画では、夏コミ恒例となったスタンプラリーをC104でも実施。また、過去のまんレポ展示では今回のテーマを「コミュニケーション編」、「コスプレ編」にして、昔のまんレポを紹介し、コミックマーケット調査隊は、「今日のご予算は?」と題して、今回の予算と予想通りの出費だったか否かを、参加者の皆さん自身にシールで、マッピングしてもらいました。その他、C104の企画それぞれの細かい報告については、『コミックマーケット104 準備会企画フォトレポート』をご参照ください。


 取材に関しては、両日とも100団体、200人を超えています(1日目113団体・253人、2日目124団体・219人)。コミケットが色々な角度からとらえられており、様々な切り口の報道がなされているのを興味深く拝見しました。特にTV番組では、報道やワイドショーは、パリオリンピックと重なったこともあり扱いは少なかったもの、バラエティ系の番組の取材が多くなっています。そのせいもあってか、コミケットそのものを取材というよりも、番組のテーマに合わせて、コミケ参加者にインタビューを行う企画が目に付きました。取材をしている方の話では、「コミケ参加者の皆さんにはよく答えていただき、幅広い情報が取れるのがありがたい」とのこと。参加者の皆さんそれぞれの丁寧なマスコミ対応が、偏見やネガティブな扱いを減じるのに役立っています。ご協力いただいた参加者の皆さん、ありがとうございました。

 そして、今回ある意味ネットを最もにぎわしたのが、ヴィーガンの方の肉食に反対する街宣活動かもしれません。ビッグサイト敷地外の扱いとしては「公園」の一部である場所での行動であり、準備会としても限定的な対応に留らざるを得ませんでした。先方の拡声器による音楽が、入場の誘導アナウンスの邪魔になるのは安全上困ると、申し入れをしたものの取りあっていただけず、最終的には拡声器の場所の移動とはなったものの、開催後「主催者側から威嚇的な言動や嫌がらせ(を受けた)」と認識・主張されているのは、残念に思っておりますし、困惑もしているところです。
 とはいえ、参加者による先方への嫌がらせまがいの行為が、実際起きてもいます。このような行動は何の効果もないばかりか、むしろ現場の準備会スタッフの負荷を増やすだけです。多くの参加者の皆さんには今さらだと思いますが、コミックマーケットは「同人誌を中心としてすべての表現者を許容し継続することを目的とした表現の可能性を広げる為の「場」である」と自らを定義しています。その前提において、入場への支障や参加者への危険などの理由がないにも関わらず、不快であるなどの感情的な理由から、街宣活動に対し参加者が排除、攻撃などを行った場合、コミックマーケットの理念に傷がつきかねない、ということもご理解ください。今後同様の行為を見かけた場合は、話題にもしないのが一番効果的です。安全上の問題がない限り、華麗にスルーしていただけると大変ありがたいところです。

 最後に、重ね重ねのご説明となりますが、東京ビッグサイトの改修工事についてです。C103とC104は会議棟が使用できませんでしたが、今冬のC105は工事と工事の間ということもあり、幸いにも全ての施設が使用できます。そして、来年2025年からの2年間は、いよいよ東展示棟の半分ずつが年ごとに使えない形での開催となります。先日、次々回2025年夏のC106の日程を発表しましたが、開催日程が従来から変更される場合もあります。できるだけ多くのサークルや参加者を受け入れられる形での開催を検討していますが、その一方で、安全な開催も続けていかなければなりません。引き続き、準備会からの情報提供に耳を傾けてください。そして、改修後の東京ビッグサイトがより良くなっていることに期待しつつ、さらなるご協力をいただけますと幸いです。よろしくお願いします。

(2024年11月6日本文公開)


[Since: Aug. 20, 2024] [Updated: Nov. 6, 2024]